2026年1月、今年も横浜DeNAベイスターズの主砲・佐野恵太選手を筆頭に、知野直人選手、山本祐大選手、小笠原蒼選手の4選手が、自主トレの地・グアムへと旅立ちました。
トップアスリートにとってグアムは、寒さや怪我という退路を断ち、心身を極限まで追い込むための“聖域”。過酷な環境下で自らを鍛え抜くことでしか得られない進化が、そこにあります。
シーズンを戦い抜くためのカラダづくり、そして「進化させるためのトレーニング」とは何か。グアムキャンプを統括したパーソナル・トレーナー志水浩二に話を聞きました。
佐野恵太選手が求める「1センチ」の純度

「去年と同じことができたから良し、とは全く思わない」
佐野恵太選手は、実績を積み上げ、キャリアの円熟期に入りながらも、自らに「前年より必ず上乗せ」という苛烈な負荷を課します。
スクワットで腰を落とす深さ、頭上で手を叩く際の正確な位置。
意識が遠のくほどの疲労の中で、人間は無意識に「楽な選択」をしてしまう。しかし、その「1センチ」の妥協を、佐野選手は決して許しません。

志水浩二トレーナー(以下、志水トレーナー)「佐野選手は、グアムでのトレーニングを始めた年に首位打者を獲得し、シーズンを通して怪我なく戦い抜きました。結果を出すためには、どれほど苦しい状況でも妥協せず、正確な動きを積み重ねるという選択の積み重ねが大事だと感じています。佐野選手にとっての“1センチ”とは、進化を右肩上がりに保ち、1年間安定したパフォーマンスを実現するための再現性そのものだと」
トッププレーヤーが、スクワット一つにすら妥協しない姿を間近で見ることは、若手選手にとって「プロとしての基準」を突きつけられる体験でもあります。


志水トレーナー「佐野選手は自分のカラダとココロの状態を、非常に論理的に捉えています。メンタルの安定は運や感情の副産物ではなく、睡眠、食事、練習、そして過酷なトレーニングを100%やり切ったという“完遂”の結果。ロジックを積み上げ、言い訳の余地を潰す。それが佐野選手というプロフェッショナルの矜持です。我々トレーナーも、その哲学を具現化することを常に意識しています」


プロフェッショナルとしての境界線
アスリートのトレーニングに携わるうえで、志水が最も重視していることは何か。
志水トレーナー「選手のシビアな要求に対して、トレーナー側も同じ熱量と信念を持っているか。どこに価値を置いているのかを、互いに握り合うことが土台になります。選手の口から哲学的な言葉を引き出せた瞬間、仕事の9割は終わっていると言ってもいい」
トレーナーは、単なるメニューの提供者ではなく、チーム全体の出力を最大化させる演出家としての一面も。今回、志水は、渋谷店でチームリーダーを務めるパーソナル・トレーナー島﨑龍太をグアムに同行させました。
志水トレーナー「アスリートのトレーニングに限ったことではありませんが、パーソナル・トレーナーは“必要とされる存在”であるべき。選手にとって、カラダづくりに詳しい誰かではなく『この人が必要だ』と思われる存在になるためには、選手の価値観や思考を丸裸にするほど理解する必要があります。この経験は島﨑にとって、トレーナーとしても、チームビルディングを担うリーダーとしても大きな財産になるはずです」

志水は、島﨑に選手に対する言葉のチョイスを考えさせ、トレーニングの士気を上げさせる。トレーナー陣がこれほどまでに必死に動いているのだから、自分たちはさらに先へ行かねばならない――選手たちにそう感じさせる空気をデザインしていく志水の姿を目の当たりにした島﨑は何を思ったのだろう?
島﨑トレーナー「自分は日頃、トレーニングに向けた事前準備はかなり入念に行うほう。得意だと自負していたんですが、ジムというホームを離れ、パフォーマンスが人生を左右するというアスリートの厳しい状況下での準備は、想像以上。地面の状態確認から、選手の反応や疲労度を見越した代替案の用意、どんな言葉をかければ納得して動いてもらえるか・・・準備という概念を超え、もはや戦略でした」

長期間にわたり選手とトレーナーが時間を共にする自主トレ。志水は、どれほど場が和んでも、翌朝のフィールドで「100%を超えろ」と要求するために、あえて“トレーナーとしての壁”を保ちます。
それは、慣れ合いを排したプロ同士の距離感。リスペクトに基づいたこの「壁」こそが、選手を加速させる装置だと考えているからです。


カラダは嘘をつかない――「進化」を選択した者たちの結末
「年齢を言い訳にしない」 佐野恵太選手が掲げる右肩上がりの進化は、グアムの地で、確固たる「根拠」を刻みました。
志水トレーナー「カラダは嘘をつきません。あの日、あの1センチを妥協しなかった者だけが、シーズンを戦い抜く武器を手にする。4選手の姿は、我々トレーナーにとっても大きな刺激でした。勝負の世界に生きるアスリートの生き様は、スポーツに限らず、自らの人生に真摯に向き合うすべての人々に、妥協なき積み重ねの価値を問いかけていると感じます」

プロ野球選手と、カラダづくりのプロ。
両者が熱量をぶつけ合い、ロジックと哲学を磨き上げたグアムでの時間が、やがて訪れるシーズンの歓喜を生む“発射台”となる。
現状維持は停滞ーー常にキャリアハイを体現する佐野選手と、グアムにて「佐野の洗礼」を浴びた知野選手、山本選手、小笠原選手。2026年シーズン、その結実から目が離せません。


グアムキャンプの様子はトータル・ワークアウト公式instagramでも多数紹介しています。ぜひご覧ください。
志水 浩二/KOJI SHIMIZU
TOTAL Workout トレーニング開発部長
パーソナル・トレーナー歴20年(2026年現在)
小学生時代より野球に親しむ。一時はプロを目指していたが、肩の故障により夢を断念する。
「スポーツに関わる仕事がしたい」という思いから、パーソナル・トレーナーを志す。トータル・ワークアウト渋谷店の店長を経て、現在はトレーニング開発を統括。アスリートなどのコーチングも多数務める。

志水浩二トレーナーにまつわる記事は以下の通り。
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