神経回路が爆発的に発達する、一生で一度の黄金期「ゴールデンエイジ」
神経回路の発達が最も盛んな5~6歳までに大人の80%程度が形成され、12歳頃には、ほぼ100%に達します。
神経系の発達というと、運動神経が注目されますが、脳の中の神経の回路の発達なので、当然、思考力や集中力と言った脳の発達にも関わっていると考えられます。
一生を左右すると言っても過言ではない、ゴールデンエイジの運動や親の取組みについて、20年以上の歴史を持つパーソナル・トレーニングジム、TOTAL Workoutの志水トレーナーに教えていただきました。
あらためて「ゴールデンエイジ」について教えてください
志水トレーナー(以下 志水):発育、発達のプロセスで、神経系の発達が著しい時期があります。
5歳~12歳の時期がそれに該当し、「ゴールデンエイジ」と呼ばれています。
ゴールデンエイジ期はなぜ重要なのでしょう?
志水:神経回路の成長が著しい時期で、神経が枝分かれを増やして成長していくのはおよそ12歳までと言われいて、それ以降は爆発的な成長が見込めなくなります。
また、この時期は『即座の習得』という特徴があり、見たものをそのまま真似ることができる、習得できる、という特徴があります。
日々のトレーニングで、子どもの指導する際に、トレーナーが一生懸命走り方(肘の角度、脚を挙げる角度、腕を振るタイミングなど)を論理的に説明しても出来ないものの、見本を見せると一度で出来てしまう、ということは今までも多く経験しています。
よって、ゴールデンエイジ期には、様々な運動やスポーツを行うことが重要とされています。
志水トレーナーは子どもの頃積極的にカラダを動かされていましたか?
志水:私自身は、カラーボールで草野球、鉄棒をゴールに見立てた草サッカー、ドッジボール、ブランコの前にある柵でバランス歩行、などなど、日が暮れるまで走り回って遊んでいました。
私が小学生だった1980年代は小学生の外遊びの平均時間が1日約3時間だったのに対し、現在は1時間前後と大幅に減少しています。
運動神経とは何をさすのでしょうか?
志水:神経回路が発達する際、まず一つの神経回路が発達し、それが多方に枝分かれして発達していきます。複数のスポーツや動作を行うことは、脳を刺激し活性化します。筋肉は脳からの指令を受けて動作するため、この連携が円滑になると、「運動神経が良い」とされるような、素早く、しなやかな動きが出来るようになります。神経の枝がはりめぐらされ自分のカラダを自分の思い通りに動かすことができる能力が高いことを、運動神経が良いと表現されているのだと理解しています。
ゴールデンエイジの子どもに対してどのようなトレーニングをしているか教えてください。
志水:神経系のトレーニングではSuper Treadmill Training(スーパートレッドミルトレーニング)と呼ばれる、日本ではTOTAL Workoutだけが所有している高速・高傾斜トレッドミルを用いて「走る(ダッシュ)」を軸につくったトレーニングメソッドを、アスリートだけでなく、子どもにも積極的に活用しています。
適切なフォームを意識してカラダを動かすことで、脳(神経)と筋肉の連携が向上する画期的なトレーニングです。
また、トータル・ワークアウト六本木ヒルズ店のある六本木ヒルズでは「未来を担う子どもたちにこそ 本物の場所で本物の体験を」をコンセプトに2009年より「KIDS’ WORKSHOP 」を開催していて、主催する森ビル株式会社よりオファーをいただき、過去6回「運動能力向上プログラム」を開催しています。
このプログラムでは、スラックラインと呼ばれる不安定なベルト状のラインの上を歩いたり座ったりして楽しみながらバランス感覚を身に付けます。
まずはインストラクターの手を支えに、約4mのラインを歩くところから始まります。
最初は両手を握りしめ、目線を足元から上げることもできない子どもたちも、プロライダーのデモンストレーションを観た後は、極力インストラクターの補助に頼らないように歩いたり、片足でバランスを取っみたり、中央でしゃがむなど、様々な技に積極的にチャレンジする姿が見られ、最後にはポーズを取って写真に応じる余裕が出るほどの子も現れました。毎回、子どもたちの可能性には驚きと刺激をうけます。
先日も、渋谷区からオファーをいただき、元プロ野球選手の斎藤佑樹さんと一緒にスポーツを楽しもう!という小学生向け運動神経トレーニング・ワークショップに、弊社の池澤智トレーナーが講師として参加し、わたしも小学生の対応をさせていただきました。
渋谷区主催のワークショップの内容を詳しく教えてください。
志水:「-HIGH FIVE!KIDS SHIBUYA-斎藤佑樹さんと一緒にスポーツを楽しもう!小学生向け運動神経トレーニング・ワークショップ」にて池澤智が講師を務め、私含め数名のトレーナーが、参加してくれた小学生を低学年・中学年・高学年にわけ、バランス・走り・ボールを投げるといった動作から、全身の使い方や集中を高める方法を指導しました。
視覚情報を除去し脳の情報処理能力を高めるストロボゴーグル「VIMA」や、動作分析ツールを使用し、ただがむしゃらに頑張るだけでなく、運動神経を効率的に向上させるコツを伝え、「できた!」という実感と自信を体験してもらいました。
動作分析ツールは、さすが生まれた時から電子機器が身近にあった現代っ子だけあり慣れたもの。パーソナル・トレーナーが一方的に指導するだけでなく、参加した小学生本人が自分の動画を観ながら考え、改善点に気づく、という相互のやり取りを通じて、自ら気づき、意識することで、子どもたちのカラダの使い方には歴然とした変化がみられました。イベントに参加された斎藤佑樹さんも、子ども達の可能性に驚かれていました。
スポーツが笑顔をもたらす現場に立ち会い、改めてトータル・ワークアウトとして、パーソナル・トレーナーとして、子供だけでなく、誰にとっても笑顔をもたらすスポーツ環境づくりに携わっていきたいと思いました。
脳の神経回路が発達すると、頭が良くなるのでしょうか?
志水:私は教育者でも研究者でもないので確実なことは申し上げかねますが、カラダの動きだけでなく、集中力や思考力にも良い影響をおよぼすという研究は多くなされています。
頭が良い、勉強が良くできる、という観点からは離れますが、強度なトレーニングを行うアスリートの集中力や、戦術をたてるための思考力からも、神経回路の発達と脳の関係性をうかがうことができます。
スポーツはカラダ、勉強は脳、という線引きではなく、カラダと脳の連携でもたらされる相乗効果を意識してみると良いと思います。
子どもたちの運動不足が気になる現代。大人ができる働きかけがあれば教えてください。
志:外遊びの時間が減り、スマートフォン等電子機器を使う時間が増えたことで運動不足に陥る反面、それらIT機器の普及、進化には利点もあると思います。
先ほど申し上げた『即座の習得』という特徴を活用するために、手軽にプロの活躍をタブレットなどで繰り返し観ることが出来る環境は大きなメリットがあると思いますし、特別な機器がなくても、スマートフォンの動画撮影で自らの動作解析が容易にできる、というのも昔では考えられない事。
子どもたちの神経系が成長するために効果的な設備が整っている、とも言えるのです。電子機器を悪と見なすのではなく、限られた時間でも効率的に運動ができるツールである、という利点にも目を向けてみていはいかがでしょう?
まずは大人がゴールデンエイジの運動の必要性を理解し、各々の環境にあった方法で子供の日常生活に運動を取り入れる意識を高めたいものです。大人がカラダを動かす楽しさを伝えられたら言うことなし。
ゴールデンエイジ期にどの様なトレーニングをすべきか。子どもたちにとって最善の環境をつくる手助けができれば、パーソナル・トレーナー冥利につきるところです。
「将来スポーツを行っても、または行わなくても、カラダの使い方は一生ものです!
KOJI SHIMIZU/ 志水 浩二
TOTAL Workout トレーニング開発課マネージャー / 渋谷店 店長
小学生時代より野球に親しみ一時はプロを目指していたが、肩の故障により夢を断念する。「スポーツに関わる仕事がしたい」という思いからフィットネス業界を志し、パーソナル・トレーナーになり今年で15年、渋谷店店長としてトレーナーを束ねている。トータル・ワークアウトがパートナーシップを結ぶアメリカのトレーニング研究施設、アスレチックリパブリックと連携し、新たなトレーニングの開発や導入を担い、アスリートへの最先端トレーニングの提供やコーチングを多数務めている。