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筋トレに必須のタンパク質の効果的な摂取方法を栄養士が解説

筋トレと共にプロテインなどでタンパク質を摂取するのが一般的になりつつあります。筋肉の材料になるタンパク質の摂取は、筋肉を成長させるために重要です。

しかし、タンパク質の効果的な摂取方法はあまり知られていません。筋トレの効果を高めるためにタンパク質を摂取する場合、摂取の量・回数・頻度が重要です。また他の栄養素の摂取も重要になります。

この記事では栄養学とカラダをかえるプロであるパーソナル・トレーナー、およびエビデンスに基づき、タンパク質の効果的な摂取方法について解説します。ぜひ最後まで読んでいただき、効果的なタンパク質の摂取方法を学んで、あなたの筋トレの効果を高めてください。

タンパク質とは

タンパク質は英語でProteinであり、語源はギリシャ語のProteusです。意味は「もっとも大切なもの」。タンパク質は筋肉、肌、皮膚、髪、内臓など、カラダのさまざまなパーツの材料になります。筋トレだけではなく、人間のカラダに不可欠な栄養素です。

そしてタンパク質は数十個のアミノ酸がつながって構成されています。摂取したタンパク質は、小腸でアミノ酸に分解されて体内に吸収されるため、体内ではアミノ酸として働きます。

アミノ酸について

アミノ酸は20種類あり、9種類の必須アミノ酸と11種類の非必須アミノ酸に分けられます。

必須アミノ酸9種類バリン・ロイシン・イソロイシン・リジン・メチオニン・フェニルアラニン・スレオニン・トリプトファン・ヒスチジン
非必須アミノ酸11種類グルタミン・アルギニン・システイン・アスパラギン・グリシン・アラニン・プロリン・チロシン・セリン・グルタミン酸・アスパラギン酸

必須アミノ酸は体内で合成できないため、食事やサプリメントから摂取しなければなりません。一方で非必須アミノ酸は体内で合成できるため、必ずしも食事からの摂取が必須ではありません。

また非必須アミノ酸の中には、ストレスがかかったときに必要量が増すグルタミンのような「条件下必須アミノ酸」もあります。条件下必須アミノ酸は、状況によって摂取量を増やすことが求められます。

なぜアミノ酸の解説をしたかというと、タンパク質は「質」が重要だからです。タンパク質の「質」は「アミノ酸スコア」という指標によって表されます。

アミノ酸スコアとは

アミノ酸スコアは食品のタンパク質の栄養価を表す指標で、必須アミノ酸がバランス良く含まれているかを数字で表しています。

先ほど解説したように、タンパク質は小腸でアミノ酸に分解されて体内に吸収されます。そのため「どのアミノ酸でそのタンパク質が構成されているか」がとても重要です。

タンパク質量が多くても必須アミノ酸の種類が少なければ、アミノ酸スコアが低い=タンパク質の質が低い、ということになります。

先ほど解説したように、必須アミノ酸は食事からの摂取が必須です。アミノ酸スコアが低い食品を大量にとってタンパク質の量を満たしても、必須アミノ酸が不足してしまう可能性があります。

アミノ酸スコアは肉類や魚介類、卵や乳製品などの動物性食品が高い傾向にあり、植物性食品が低い傾向にあります。筋肥大が目的の場合も健康維持が目的の場合も、アミノ酸スコアの高いタンパク質の摂取が重要です。

筋トレとタンパク質の関係性

筋トレによって十分な負荷を筋肉に与えると、筋繊維は微細に損傷します。その後およそ48〜72時間かけて、微細に損傷した筋繊維が以前よりも太くなりながら回復します。 これを超回復といい、筋トレによって筋肉が成長するメカニズムの1つです。

そして超回復のためには、筋肉の材料となるたんぱく質が必要です。そのため筋トレ中は、必要なタンパク質量も増えるため、食事やサプリメントからより多くのたんぱく質を摂取しなければなりません。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

主要な食品のタンパク質含有量と摂取量の目安

続いて、一般的なスーパーで購入できるタンパク質の含有量が多い食材を紹介し、推奨摂取量を解説します。推奨摂取量は筋トレをしない人・する人で変わります。

主要な食品のタンパク質含有量

最初に、文部科学省の食品成分データベースから、スーパーで購入できる食材でタンパク質の含有量が多い食材を紹介します。*1 すべて可食部100gあたりのタンパク質含有量です。

肉類

以下はすべて、焼いた場合のタンパク質含有量です。脂質の少ない肉ほど、タンパク質が多い傾向にあります。

  • 豚ヒレ:39.3g
  • 鶏むね(皮付き):34.7g
  • 鶏ささみ:31.7g
  • 牛もも:28g
  • 牛ヒレ:27.2g

魚介類

以下はすべて、焼いた場合のタンパク質含有量です。

  • しろさけ:29.1g
  • くろまぐろ(養殖):29g
  • まるあじ:28.7g
  • べにざけ:28.5g
  • まこがれい:28.5g

乳製品(チーズ)

乳製品の中でも、チーズはタンパク質が豊富です。ただし、脂質も高いです。

  • パルメザンチーズ:44g
  • チェダーチーズ:25.7g
  • プロセスチーズ:22.7g
  • カマンベールチーズ:19.1g
  • モッツァレラチーズ:18.4g
  • カッテージチーズ:13.3g

筋トレをしない方のタンパク質摂取量目安

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で推奨されているタンパク質の摂取量は以下のとおりです。*2

  • 男性(18〜64歳)65g/日
  • 女性(18〜64歳)50g/日

こちらは健康維持するために必要な摂取量です。筋肥大やダイエットのために筋トレをする人は、もっと必要量が増えます。

筋トレをする方のタンパク質摂取量目安

筋トレをしている人は、筋肉の材料であるタンパク質の必要量が増えます。体重1kgあたり1日1.5〜2.5gが摂取量の目安です。体重60kgの人なら90gから150gを1日に摂取しましょう。

筋トレに効果的なタンパク質の摂取タイミング

筋肥大させるために有効なタンパク質の摂取タイミングは、明確にはわかっていません。*3

しかし筋肉は、血中アミノ酸濃度が高いと合成が活発になり、低いと分解が活発になると考えられています。そのため、血中アミノ酸濃度を特に高めたい以下の3つのタイミングでタンパク質を摂取しましょう。

  • トレーニング前後
  • 就寝前
  • 朝食前

トレーニング前後

筋トレ開始直後から筋肉の合成と分解が活発化するため、筋トレ前後のタイミングでタンパク質を摂取して、血中アミノ酸濃度を高めることが重要と考えられています。

血中アミノ酸濃度がピークを迎えるまでの時間は、一般的な食事か、サプリメントかによって以下のように違います。

  • 一般的な食事:2時間
  • プロテイン:1時間
  • アミノ酸(BCAA・EAAなど):30分

食事は筋トレ2時間前に終わらせましょう。プロテインなら1時間前、BCAAやEAAなどのアミノ酸は30分前に飲むといいです。筋トレ中は消化吸収のエネルギー消費が少ないアミノ酸がおすすめです。

そして、筋トレ終了直後も筋肉の合成が高まっていると考えられているため、筋トレ後すぐにタンパク質を摂取しましょう。このときは吸収率の高いホエイプロテインやその他のプロテイン、高タンパク質の食事がおすすめです。

就寝前

就寝中にカラダが回復するとき、より筋肉の合成が期待できるため、就寝前にタンパク質を摂取して血中アミノ酸濃度を高めましょう。*4

また、就寝後は数時間にわたってタンパク質補給ができません。そのため深夜から早朝にかけてはどうしても血中アミノ酸濃度が低下してしまいます。血中アミノ酸濃度が低下する時間を最小限にするためにも、就寝前のタンパク質摂取がおすすめです。

しかし、就寝直前に消化の負担が大きい肉類や乳製品を食べてしまうと、寝ている間に消化にエネルギーを使い、睡眠が浅くなってしまう可能性があります。そのため、就寝前はプロテインがおすすめです。

朝食時

起床時は、前夜のタンパク質摂取から数時間が経過しているため、血中アミノ酸濃度が低下した状態です。筋肉が分解されやすい状態なので、素早くタンパク質を摂取して血中アミノ酸濃度を高めましょう。

おすすめは素早く消化吸収されるBCAAやEAAなどのアミノ酸のサプリメントです。起床後すぐにアミノ酸のサプリメントを飲んで、その後素早く高タンパク質の食事を摂りましょう。

タンパク質と併せて摂るべき栄養素

タンパク質は筋肉の材料になりますが、タンパク質だけでは筋肉は大きくなりません。筋タンパク質を合成して筋肉が肥大したり、脂肪を分解してエネルギーに変えたりなど、体内で起きる化学反応を「代謝」といいます。

この代謝を行うためには、材料となるタンパク質やエネルギー源となる糖質や脂質、代謝を助けるビタミンやミネラルなどの栄養素が必要です。必要な栄養素が不足すると、筋肉の合成や脂肪の分解がスムーズにできません。

代謝にはタンパク質の一種である「酵素」が必要であり、ビタミンは代謝を助ける「補酵素」として働きます。筋タンパク質を合成したり脂肪を分解したり、糖質からエネルギーを生んだりなど、筋トレ中に行われる代謝には以下のビタミンが特に重要です。

  • ビタミンC,B6:タンパク質の吸収をサポート
  • ビタミンB1,B2:糖質・脂質の代謝に関わり、筋トレを行うためのエネルギー作りをサポート
  • ビタミンD:アミノ酸を筋肉に取り込むサポート

タンパク質と一緒に、これらの栄養素も積極的に摂りましょう。マルチビタミンなど、サプリメントの活用も効果的です。

プロテインでタンパク質を摂取する場合の注意点

一度の食事で吸収できるタンパク質量は30gという説がありますが、根拠はありません。そのため一度の食事で吸収できるタンパク質量の明確な数値は現状ありませんが、体重1kgあたり0.25g、もしくは20〜40gほどのタンパク質量が最適と考えられています。*5

そのため、一度に大量のタンパク質を摂るよりも分割して摂取しましょう。分割することで、血中アミノ酸濃度が高い状態を維持できます。

実際に、タンパク質を摂取する回数を1日6回に増やすことで、除脂肪体重が増えて脂肪が減少したと報告されています。*6

通常の3食に加えて、2回の間食と就寝前にプロテインを活用すれば、1日に6回タンパク質を摂取できます。

筋トレとタンパク質に関するよくある質問

最後に、筋トレとタンパク質に関するよくある質問にお答えします。

  • タンパク質を摂りすぎるとどうなる?
  • プロテインで腸内環境が悪化する?
  • 筋トレをしない日も摂ったほうが良い?
  • プロテインにも種類がある?

タンパク質を摂りすぎるとどうなる?

タンパク質を摂りすぎると太る?

理論上は余分なタンパク質は脂肪になる可能性がありますが、体重1kgあたり1日4.4gのタンパク質摂取を8週間続けた実験では、体脂肪は増加しなかったと報告されています。*

一方でこの実験では除脂肪体重も増えなかったため、推奨される体重1kgあたり1日1.5〜2.5g以上のタンパク質摂取をしてもあまり意味がないようです。

タンパク質を摂りすぎると腎臓に負荷がかかる?

タンパク質を摂りすぎると処理する腎臓に負荷がかかりすぎるという説がありますが、現状はタンパク質を摂りすぎることの悪影響に明確な根拠はありません。厚生労働省もタンパク質の摂取量は腎機能との関連が深いとしているものの、耐容上限量は設定していません。*7
ただし、タンパク質を多く摂取することで、カロリーオーバー、脂質が高くなりすぎるデメリットもあります。摂取すべきカロリーを目安に、摂りすぎには注意しましょう。

短期間で効率的にカラダを変える為に高タンパク質に偏った食事をする際は、3週間程度を目安に、期限をもうけることをおすすめします。

プロテインで腸内環境が悪化する?

プロテインを飲むとお腹がぐるぐる鳴る、おならがよく出るなどの体験談が多いことから、腸内環境が悪化するという説もあります。しかし、これらはタンパク質が主な要因ではありません。

ホエイプロテインにも種類があり、主に流通しているのはWPC(ホエイプロテインコンセントレート)です。WPCではタンパク質だけでなく、牛乳に含まれる糖質の「乳糖」も含まれます。

牛乳を飲むとお腹が下る人など乳糖の消化が苦手な人は、WPCを飲むとお腹がぐるぐる鳴ったり下ったりしてしまう人もいるでしょう。

WPCでお腹の調子が悪くなる人は、WPI(ホエイプロテインアイソレート)を飲みましょう。WPIはWPCから糖質や脂質をできる限り取り除いたプロテインです。乳糖が取り除かれているため、お腹の不調も改善できるかもしれません。

WPCよりWPIは少し割高ですが、その分タンパク質の含有量が多く吸収率も高いため、タンパク質量あたりの金額で比較すると大差はありません。

また、植物性のプロテインもあるので、体質や用途により使い分けてみましょう。

筋トレしない日もタンパク質を摂ったほうが良い?

筋トレ後は、48時間以上筋タンパク質の合成が高い状態が続きます。*8 そのため筋トレをしない日もタンパク質を摂取しましょう。

先ほど解説したとおり、血中アミノ酸濃度が高いと筋肉が合成されやすくなり、低いと分解されやすくなります。そのため筋トレをしばらくしなかったとしても、筋肉量を維持するため、日常生活で消費されるタンパク質を補うためにはタンパク質の豊富な食事を摂り続けることをおすすめします。

プロテインにも種類がある?

プロテインは、ホエイ・カゼイン・ピー・ソイなどの種類があります。ホエイとカゼインは牛乳から抽出されたプロテインで、ピーはえんどう豆、ソイは大豆から抽出されたプロテインです。それぞれアミノ酸のバランスの違いや、吸収時間の違いがあります。

ホエイは摂取してから1〜2時間で血中アミノ酸濃度を迎え、3〜4時間で通常時に戻ります。一方でソイは6時間、カゼインは7時間吸収され続けるため、長時間タンパク質を摂取できない就寝前の摂取がおすすめです。

基本的にはホエイが一番筋力向上作用があり、筋タンパク質の合成も高かったと報告されているので、ホエイプロテインがおすすめです。*9

また、アレルギーやサステナブルな生活を意識する場合は、ソイプロテインやえんどう豆から抽出した「ピー・プロテイン」といった植物性のプロテイン飲みましょう。
ピープロテインはソイより一般的ではありませんが、えんどう豆はアレルギー特定原材料28品目に含まれておらず、筋合成に重要なBCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)を豊富に含んでいるため、ソイよりも筋合成作用が高い可能性があります。

タンパク質を効果的に摂取して筋トレの効果を高めよう

筋トレ中は、1回20〜40gほどのタンパク質を1日6回に分けて摂取するのがおすすめです。1日の合計摂取量の目安は、体重1kgあたり1.5〜2.5g。体重60kgの人なら、90〜150gです。1回20gのタンパク質を1日6回に分けて摂れば20g×6回=120gとなります。

タンパク質を摂りすぎると健康に悪影響という説もありますが、現状は明確な根拠がなく、厚生労働省も耐容上限量は設定していません。

とはいえ、人間のカラダは環境に順応すると変化が出づらくなるので、短期間でカラダをかえるための高タンパク質食を行う場合は、3週間を目安に、一定の期間を設けることをおすすめします。

そして、筋タンパク質の合成はタンパク質だけではできません。筋トレ中に糖質をエネルギーにするためにも、脂肪を分解するためにも、代謝を助けるビタミンなどの補酵素が必要です。筋トレ中は特に、ビタミンC、B1、B2、B6、Dもしっかり摂りましょう。

筋トレ中の食事に関しては、以下の記事もぜひ参考にしてください。

もし自分で実践するのが難しい場合はパーソナル・トレーニングがおすすめです。プロのトレーナーから、あなたにパーソナライズされた食事指導を受けられます。

効率よくタンパク質を摂って、あなたの筋トレの効率を高めてください。

  • タンパク質とアミノ酸 前編 ー 山本義徳業績集2
  • ビタミンのすべて ー 山本義徳業績集6

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