いつも心が穏やかでフラット。未来に対する不安は皆無。
そう言い切れる人がどれだけいるでしょう?
ヨガが誕生したといわれる数千年前に比べると、現代は騒音が多く、本当の暗闇にはなかなか出会えない。情報はとてつもない量で行きかい、我々は常に脳を働かせ、日に3万5千回も「判断」していると言われています。
この状況では脳が疲れてあたりまえ。カラダが疲れたらボディケアをしたり疲れにくいカラダづくりをするように、脳やココロを整えるにもスキルがあるのです。
「集中」と「瞑想」という2つの相反する状態を、自らの意思でコントロールするスキルを高め、自分の状態を自在にドライブすることで得られるココロの整え方を、VRの映像を使い効率的に体感いただくプログラムを「ACTIVE WELLNESS(アクティブ・ウェルネス)」スタートアップイベントの中で開催しました。
ココロの柔軟性
パンデミックの影響もあいまって、ココロの健康に対するニーズが非常に高まってきていることを切に感じていたトータル・ワークアウト代表の池澤はYOGA界の第一人者ケン・ハラクマ氏に相談し、TOTAL Workout独自のマインドフルネスのプログラムを2020年にスタートしました。
このマインドフルネス立ち上げに携わったのが、トータル・ワークアウトのパーソナル・トレーナー関谷。ケン・ハラクマ氏のもとでYOGAを学び、TOTAL Workout独自のプログラムTW YOGAの考案にも携わっています。
16年間のパーソナル・トレーナー歴の中で、やはり近年は頭やココロが疲れた人が多く見受けられると彼女は言います。そういった悩みに対応するためには「ココロの柔軟性」を養うことが効果的です。
ストレッチをしてカラダの柔軟性を高めるように、ココロにも柔軟性を養う方法があり、それがマインドフルネスというアプローチなのです。
自分の意識をドライブする
周囲の騒音などの外的刺激に意識を引っ張られて集中できない。
ココロを穏やかにしたいのに、心配事やストレスで肩の力を抜くことができない。
こういう経験は誰にでもあるのではないでしょうか?
1つの物事に「集中」することと、これまでの経験や先入観で物事を判断せず、あるがままを受け入れる「瞑想(メディテーション)」。この2つの状態を自分の意志で操縦できれば、生活の質も、生産性も向上するのです。 そこで、集中と瞑想という相反する意識の切り替えを可視化した、ケン・ハラクマ氏監修のVR映像を活用し、意識の切り替えの感覚を効率的に体感していただきました。
仮想空間
頭やココロを緩めるためには、まずはカラダを心地よくすることが大切です。
クッションなどを使用して、腰や膝、足首に負担のかからない楽な姿勢で座り、室温は低くなりすぎないようにします。寒いとカラダが緊張しやすいからです。
いつでも、どこでも、目を開けていても、集中・瞑想ができれば理想的ですが、実際には外的刺激に左右されたり、静寂というある種「無限の自由」の中では様々な物事にとらわれてしまいがちです。そこで、VRならではのいわゆる「没入感」が効果的なのです。
目元を覆うゴーグルを装着するのですが、360度の立体的な風景と、包み込むような音声のせいか、宇宙飛行士のヘルメットをかぶったような、はたまた1人用のカプセルにカラダごと入ったかのような包み込まれる感覚があります。
暗闇の中を動く白い球と、ケン・ハラクマ氏のガイダンスに合わせ、意識を遠くに持っていく、ココロを1点にとどめる、逆に球を受け止めて一体化する、といった感覚を体験。 映像を追うことで横道にそれることなく、言われるがままに意識を操縦できたのではないでしょうか?
ブラックホール
次はブラックホールの映像を観ていただきました。
全く同じ映像でも、
意識を向こうにむける集中。
意識が向こうからこちらに向かってくる瞑想。
見方、捉え方を切り替えることができるのが不思議です。
ここで筆者が個人的に感じたのは、受け入れている状態の心地よさ。
ブラックホールは初め「向かってくる」感覚に若干の恐怖心を覚えたものの、次第に向かってくるのではなく「包み込まれている」感覚に切り替わり、以降いつまでもその感覚の中に身をゆだねていたいような気持になりました。
スマートフォン等の普及により、飛躍的に情報量が膨れ上がったことが我々の脳を疲れさせている反面、最先端デジタル機器であるVRによって脳が癒される。情報や映像を逆手に取り、古い考えに縛られず良いものはどんどん柔軟に活用するところに、ケン・ハラクマ氏とトータル・ワークアウトの哲学を垣間見た気がしました。
動きをともなう集中と瞑想
VRゴーグルを外し、立ち上がってYOGAのポーズで血流良くしカラダをリラックスさせてから、動きを伴う集中・瞑想に挑戦です。
太陽礼拝の1つのポーズをとる際、まずは関谷トレーナーが指示した筋肉と関節に集中し、しっかりとバランスがとれるポイントを意識する。そして、バランスが定まったら、筋肉と関節に集中していた意識を次第に広範囲にひろげ、最後は自分を外側から見ているような俯瞰に意識を切り替えるイメージで取り組んでいただきました。
「ヨガ上級者というと、難解なポーズが出来る人をイメージしがちですがそうではなく、1つのポーズから瞑想状態に入り、それを1時間、2時間と続けられる人なんです」と関谷トレーナー。自分のカラダを俯瞰することで、辛さを感じなくなる、時間が短く感じるのだそう。
たとえば、歩いて目的地に向かう際、地図を見ながら歩いている時はすごく遠く感じた道のりが、すでに道筋を把握した帰路には、歩くことに集中できたことですごく早く感じた、という経験はないでしょうか?その感覚に近いかもしれません。
3分間の瞑想
最後に、ビジュアルも、動きも、ガイダンスも取り去り、部屋の照明をぐっと落として3分間の瞑想にトライしていただきました。
「集中と、集中している自分を俯瞰し瞑想に切り替える。この切り替えを意識してみて下さい。VRの“白い球”の映像を思い起こしていただいてもかまいません」
関谷トレーナーの指示に従い、胡坐をかき、目を閉じる参加者の皆さん。3分間、どのように過ごされたのでしょうか?
実は、この集中と瞑想を普段、無意識で出来ている人は意外と多いそうです。アスリートがゾーンに入ったと言われる状態や、クリエイティブな仕事をしている人が作業に煮詰まって息抜きをした際にふとアイデアが湧く。こういった現象は集中から瞑想に切り替わった際に起こると言えるのだそう。
脳科学の世界でも、脳の広い領域が活性化している「デフォルト・モード・ネットワーク」の状態がひらめきにつながる、という話をテレビで観たな、あれはなんの番組だったか・・・など余計な事を考えた私の視界からは、集中と瞑想をコントロールする“白い球”はどこか遠くに飛んでいってしまいました。そして3分間が経過。
デジタル機器も、情報も、視覚も遮断された3分間のなんと長い事。いかに、情報量が多く、スピーディーな時間の流れに慣れているかをまじまじと感じさせられました。それ自体が悪いことではないのですが、まずは自分がそういった状況に置かれていることを認識する、そして、その状況下で自分の頭やココロ、カラダがどのような状態かを俯瞰してみることが大切なのだと気づかされた1時間でした。
瞑想状態にすぐはたどり着けないとしても、まずは自分のココロに耳を傾ける、自分のココロを見つめることからはじめてみることがライフスタイルの質を一歩先にすすめることにつながるのではないでしょうか?
「できれば毎日30分、無理であれば5分でも良いので、集中・瞑想の操縦をやってみてください」関谷トレーナーの言葉を聞きながら、そう感じました。
なかなか家という「日常」でこういった時間を持つことが難しい人は、ジムで行われている少人数制グループレッスンのマインドフルネスや、パーソナル・トレーニングでVR瞑想を活用してみるのもよいかもしれません。