トータル・ワークアウト 代表、池澤智(いけざわとも)。現在では誰もが知る「パーソナル・トレーナー」という肩書き、「パーソナル・トレーニング」という概念も含めて日本に広めた牽引者のひとり。一度、トレーニングを受けたらその圧倒的指導力に虜になる人が多いのは、日々の知識の積み重ねと研究力、さらには人間性にあるのです。100名近い精鋭パーソナル・トレーナーが名を連ねる「トータル・ワークアウト」の代表として、彼らを束ね、尊敬される存在だということも最先端を突き走るカリスマ・トレーナー所以と言えるでしょう。
数々の著名人、アスリートから指名され、長年、信頼を寄せられ指導する彼女から、これまであまり語られることのなかった日本のウェルネスの歴史、そして彼女が見据えるこれからのウェルネスとは?池澤智の人物像に迫る全3連載企画の第1弾をお届けします。
インタビュー・執筆:金沢由紀子
エディター/ライター/(株)elena代表取締役。
数々の女性誌でファッション、美容、インタビューなどを担当し、人生100年時代のウェルビーイングを追求するelenaを起業。記事制作、PR、モノ・コト・ヒトにまつわる企画・立案などを担当する。現在、女性起業家、フリーランスを応援する「NEXT STAGE アワード」をプロデュース中。
約30年前の日本の健康意識とは?
当時、アメリカでパーソナル・トレーナーとして活動していたケビン山崎氏の元へ渡り、パーソナル・トレーナーとなることを決意した池澤智。健康意識の高いアメリカ人を目の当たりにし、日本の遅れを痛感。日本にも同等の考えが広まるべきだと活動を開始します。
池澤智「28年前に、アメリカ在住だったトレーナーのレジェンドでもありトータル・ワークアウト創始者、ケビン山崎を訪ね、パーソナル・トレーナーとしての第一歩を踏み出しました。当時のアメリカではすでに健康意識が高く、日本の状況とは大きな隔たりがありました。例えば、シアトルのラリーズマーケットでは低脂肪の牛肉が売られ、ノンファットミルクも並んでいて。かたや、日本ではスターバックス1号店がオープンしましたが、ノンファットミルクなんてありませんでした。というように、まずは食に対する意識の違いを感じたんです。もちろん、運動して健康になるという考え方も日本には全く根付いていませんでした。」
「トータル・ワークアウト」オープンで日本人の意識変化
2001年東京三田にトータル・ワークアウト1号店オープン。パーソナル・トレーニングに特化したジムとしては日本初ではないでしょうか。そして、当時の主流として、ジムに行く目的は「健康になりたい」ではなく、「痩せたい」「体重を減らしたい」だったそう。
池澤智「その当時は体脂肪という言葉すら全く知られていない時代。カラダのフォルムを変えたい、痩せたいのが皆さんの共通目的。それだったら、まずは体脂肪率について理解してもらうことから始めなければいけなかったんです。道のりは長いと思いました。
女性は、ほとんどいらしていなかったですね。ウエイト・トレーニングはやらないと決めている女性が多くて。ウエイト・トレーニン=カラダを大きくする、というイメージでしょうか。一方、アメリカで目にした光景は、ぽっちゃりしている女性がウエイトを頑張っている姿。私自身、体重を落とすのにウエイトが効率いいということを体感していたんです。」
食と筋肉が明日を変えるという教え
池澤智「そのからくりは、こうです。トレーニングで筋肉が傷ついた後、修復するまでにエネルギーを使います。ということは、動かしている時だけでなく、修復している時間もエネルギーが必要とされるので、効率よくエネルギーを燃やせるということになります。
ウエイト・トレーニングを中心とした運動はせいぜい週3回。『食べる』のは毎日のことなので、食生活の改善は必須事項。なので、食とトレーニングを組み合わせたら確実に痩せるんです。
ただ、日本は糖質王国。アメリカでは白身だけのホワイトエッグオムレツがあるけれど、日本では食べられるところはあまり多くありません。日本食も糖質が多いので、筋肉を育てるには厳しい環境だと思いました。さらにアメリカでは簡単に手に入るプロテインも、当時の日本にはあまりありませんでした。私自身、アメリカから高品質なホエイプロテインアイソレートを買ってきて飲んでいました。
ただひたすら痩せたいという時代から徐々に女性の美の定義も変化して…。健康と美がセットになってきました。現在では私がオフィシャルトレーナーを務めるミス・ユニバース・ジャパンといったコンテストでも、カラダの大きい女性も多くなってきましたね。同時にプロテインを飲むのも、すっかり当たり前になりました。」
ようやくこの数年で大きく意識改革は進み、どんな場所でもタンパク質を摂取できる時代になりましたが、タンパク質を簡単に手に入れることが難しかった時代は長く続いてきました。
池澤智「当時、魔裟斗選手のトレーニングを担当していたのですが、効率よく筋肉を育てるために良質なタンパク質を摂取する必要があったんです。タンパク源を食から取り入れたいけれど、なかなか簡単には手に入れられない…。そこで、彼のためにお弁当を作ろうと。それが今あるトータル・フーズのお弁当の原点です。その他にもクライアントの方々に、私が作ったお弁当を渡し始めました。おかげさまでそういったニーズがあったんです。」
「高タンパク質・低脂肪・低糖質」という、いまやボディメイクの常識とされている、食事でカラダを変えるメカニズムを日本に浸透させた池澤智が、カラダへの吸収率までを徹底的なこだわった、質が高く効率の良い食をジムで提供する信念については、以下の記事よりご覧ください。
リーダーとして大切にしていること
池澤智「私はケビン山崎のような存在にはなることはありません。全く異なるアプローチでないといけないと、最初から考えていました。だからこそ、『カラダが変わる食べ物』を伝える人でありたい。さらに、クライアントにとって“いないと困る人”になりたいと思い続けています。」
8年前に、トータル・ワークアウトの代表に就任した池澤智。リーダーとしてそれまでの存在からさらに高みを目指すこととなります。
池澤智「リーダーにはなりましたが、メインキャラクターというかあくまでもこの組織のワンパートだという意識がずっと続いています。決して独裁ではなく、周りに左に向きたいと話したら、もっともっと左に向かせてくれるようなサポートをしてもらえるリーダーでいたいと思っています。ケビン山崎が顧問として見守ってくれるのでできること。今後も“誰かに必要とされるサポーター”であり、“サポートしてもらえるリーダー“として邁進していきたいと思っています。」
池澤智が経営者として、リーダーとして大切にしていることについて語る、インタビュー第2弾は以下よりご覧ください。
1月25日(木)公開 最新記事!
池澤智という人物に迫る連載記事 第3弾「健康が“美”を生み出す!厳選して作り上げた池澤智のルーティン公開」
池澤智ならびに、パーソナル・トレーニングジム「トータル・ワークアウト」に関する取材・お問い合わせは、以下のコンタクトフォームをご利用ください。
コンタクトフォームより問い合わせる池澤 智/TOMO IKEZAWA
TOTAL Workout 代表
パーソナル・トレーナーを目指し、トータル・ワークアウト創設者ケビン山崎の元へ渡米。フィットネスの本場アメリカで修業した日本初の女性パーソナル・トレーナー。俳優やモデルといった多くの文化人のボディメイクを手掛け高い評価を得る。2012年~ミス・ユニバース・ジャパン、16年〜22年ミス・アース、19年〜22年ミス・ジャパンのオフィシャルトレーナーを務め、トレーニングだけでなく食やメディカル、ライフスタイルと多岐にわたる知識を基に世界レベルの美を追求したボディメイクを指導。トータル・ワークアウト各店舗には自身が考案した美しいカラダを作るためのこだわりのメニューを提供するカフェ「TOTAL FOODS」がある。
ただ待っているだけではウェルネスは手に入らない。健康の為に、カラダに必要なものと不必要なものを知り自分でチョイスする能力を養うことを重視する「ACTIVE WELLNESS(アクティブ・ウェルネス)」を提唱。人生をより豊かに、より良いものにしていただくための様々なコンテンツでライフスタイルをサポートしている。