エレベーターを降りた瞬間、渋谷の喧騒から切り離された心地よい香りが広がり、気持ちが切り替わる。
リラックスとは少し違う、程よい緊張感で背筋がスッとし、歩幅が心なしか大きくなる。
TOTAL Workoutに通い出して3年になる編集者だが、フロアで時折拝見するトップパーソナル・トレーナー、池澤智さんのトレーニングは恐れ多くて受けたことがない。
今回、パーソナルトレーニングのパイオニアとして20年以上、何万人という人のカラダを変えてきた、世界レベルの「美」をつくるボディメイクのカリスマ、池澤さんに、健康や美に対する取り組みやビジョンが多様化する中で、自分らしいウェルネスとはどのようにチョイスしたらよいのか、聞く機会を得た。
TOMO IKEZAWA/ 池澤 智
トータル・ワークアウト代表
パーソナル・トレーナーを目指し、トータル・ワークアウト創設者ケビン山崎の元へ渡米。
多くの有名人やセレブのボディメイクを手掛け高い評価を得る。
2012年~ミス・ユニバース・ジャパン、16年〜22年ミス・アース、19年〜22年ミス・ジャパンのオフィシャルトレーナーに抜擢され、ファイナリストたちのボディメイクを手掛けている。
2019年 goop TOKYOエグゼクティブ・マネージャー(Beauty/Exercise specialist)就任。
六本木ヒルズには、自身が考案した美しいカラダをつくるための「Nutrient-dense foods」の考え方に基づくこだわりのメニューを提供するカフェ「TOTAL FOODS」がある。
まずはパーソナルトレーナーを目指されたきっかけを教えてください。
学生時代、まだパーソナルトレーナーという職業がありませんでしたが、漠然と「トレーナー」になりたい、という想いはありました。
足が速くなる、遠くまでボールが投げられる、など、カラダを変えることで人の役に立ちたい、特にスポーツに携わりたい、と思っていました。
そのタイミングでケビン山崎の話を聴く機会に恵まれ、カラダを変える必要があるのはアスリートだけでなく、パフォーマーや、一般の人、万人の役に立つことが出来る仕事だという認識を持ったことがきっかけで、すぐにアメリカに渡りケビンの指導を受けました。
ボディメイクに携わられて20年以上の池澤さんが感じる「健康の定義」とは?
昔の方が、不調に対する認識が薄かったですよね。
寝不足でカラダが重かったとしても「病気でなければ健康」という認識。
ストレスという言葉自体が今のように広く認識されていなかったと思います。
今は全ての事にとても敏感。
ちょっとした不調や、精神の不調がカラダに現れることにも気を配っていると思います。
健康への関心が高まれば高まるほど、肉体・精神・自分の社会的立場、全てのバランスを保つことが重要視されています。
良い傾向である反面、非常に複雑化していると感じます。
「健康」を連想する言葉自体も、フィットネスからウェルネスへ変化し、「健康」の意味を大きな枠でとらえていることがうかがえます。
そのような意識の変化に伴い、トレーニングの内容やライフスタイルにも変化が表れているのでしょうか?
フィットネスジムに通うフィットネス人口は、実はそこまで大きく変化していないのですが、ジム以外の施設や、オンライントレーニングを活用する人、自らランニングをする人、など、ライフスタイルの中に、自然に運動を取り入れることが出来る人が増えてきたと感じます。
手法は何であれ、生活に運動を取り込んでいる人は、街中ですれ違っただけでもわかりますね。
カラダの動き、使い方から見えてくるものがあります。
逆に、子供は運動不足になってきているのが心配です。
小学生の時はあまり気づかなくても、中高生になって運動不足の積み重ねに気づき、TWに通う子たちがいます。
大人たちの健康への意識が高まっているので、是非、ゴールデンエイジの運動の取り組みにも、もっと意識を高めてもらいたいです。
MINDFULNESSやBody re-Tuning®を始めとした、肉体的・精神的・社会的な健康バランスに働きかけるプログラムも積極的に開発・発信している。
改めて、パーソナル・トレーナーの意義について教えていただきたいです。
「1対1でトレーニングすること」がパーソナルトレーニングだと勘違いされている方が多いのですが、「自分の為にパーソナライズされたトレーニングを受ける」ことがパーソナルトレーニングです。
パーソナルトレーニングは、いかに一人一人の状態や目的に沿って、トレーニングを「パーソナライズできるか」が重要です。
単にトレーナーの感覚値ではなく、パーソナライズ(カスタムメイド)するための膨大なメソッド・エビデンスを持ち合わせていること、また、それを可視化できることが重要なのです。
カスタムメイドできる「要素」が膨大なのが、TWの強みです。
こういった要素がしっかりしているからこそ、お客様に信頼感・安心感を持っていただけているのだと思います。実は、この「信頼感・安心感」が、やる気をUPさせる、成功に導く重要な要素であると思っています。
病院に行く時も同じですよね?信頼できる医師にカラダをまかせれば、途中で治療を投げ出すことはありえません。なので「TWに任せておけば結果が出せる」と感じていただける組織・空間づくりを大切にしています。
TWを利用してどのように変化してもらいたいか、という想いやビジョンはありますか?
TWでトレーニングをし、実際に「能力を発揮する」のは外。ジムは完全に舞台裏と考えています。なので、ジム主催でコンテストなどはしません。
心技体とはよく言ったもので、カラダという器の中に思考などが存在しているので、器を万全の状態にすることで初めて、肉体を動かす・クリエイティブな発想をする・人との感情の交換(コミュニケーション)をする、という能力をより発揮することが出来るのだと思います。
ジムでカラダという器を整え、それを使ってインプット・アウトプットに生かしていただきたいと思います。
また、健康に不安を感じた時に来てもらえば、答えを持っているという自信があるので、信頼して相談してもらいたいです。
そのような駆け込み寺としてどんどん役立ててもらいたいです。
「カラダが資本」と、良く言葉では表現されますが、それがいかに本当かを、身をもって理解してもらえる場だと思っています。
そういった意識を持つことが一つの財産になるのではないでしょうか。
単にカラダの見た目を変えるだけでない、健康の多面性に気づかされ、目から鱗の連続。
安心感・信頼感というのは自身のトレーニング体験からも深く頷ける。担当してもらっているパーソナルトレーナーのいう事に従って確実に結果を出せているので、いまでは無くてはならない私のコンシェルジュ的存在。後半では、さらに池澤さんのライフスタイルや今後のビジョンに迫ります。
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