筋トレを行う際、どのくらいの負荷と回数でトレーニングすればいいのかがわからない、という人は多いのではないでしょうか?
筋トレの負荷を表すRM(レペティション・マキシマム)という言葉を耳にしたことのある人も多いと思いますが、筋トレの効果を最大にするためには、ギリギリ1回しか上げられない重量である1RMを基準に、筋トレの目的別に「パーセンテージ」で重量x回数を算出する考え方が一般的です。
しかし1RMというのは、その日のコンディションによりブレが生じるなど、感覚値での設定は必ずしも最短で最大の効果を出すために最適とは言えない面があります。
そこで、今回は目的に応じて最短で最大の筋トレ効率を実現するための、筋トレの負荷設定に関する新常識をご紹介します。
最後まで読んで、筋トレ効果をアップする新しいアプローチについて学んでみてください。
パーセンテージを基準とするトレーニングの基本
自分が1回ギリギリ上がる最も重たい重量を1 RM(レペティション・マキシマム)とし、1RMを基準に、目的別に重量のパーセンテージを求め、ウェイトの重量を設定する、というトレーニング方法を「パーセント・ベースド・トレーニング(PBT)」と呼びます。
例えば1RMが100kgの人が筋肥大を目的とする場合
80%の強度、つまり80kgのウェイトを8回上げる、といった算出方法でトレーニングを行います。
パーセンテージを基準とするトレーニングの問題点
1RMを基準にパーセンテージを割り出すトレーニング方法の問題点は、1RMが体調やその日のコンディションにより変わることです。
1RMは日によって約18%も上下すると言われています。
筋肥大を目的に、1RMの80%を設定した重量が、実は日によって少し軽かったり、重かったりという差が生まれてしまいます。
この誤差はトレーニングをしている本人でも気づかない事が多々あるため、パーソナル・トレーニングジムでは、トレーナーが長年の経験や、お客様の体調やトレーニングの様子、フォームといったものを見極めて調整し、筋トレの目的や効果がブレないようにする必要があります。
速度を基準とするトレーニングの基本
RMを指標としてパーセンテージを割り出す「パーセント・ベースド・トレーニング(PBT)」に対して、ウェイトをあげる速度を指標として使用するトレーニング方法のことを「ヴェロシティ・ベースド・トレーニング(VBT)」と言います。
Velocity(ヴェロシティ)は速度のことです。
ウエイト・トレーニングの重量を、ウエイトをあげる速度の結果により増減させるという算出方法をもちいる、この革新的な指標はパーソナル・トレーニングジムのトータル・ワークアウトでも取り入れ、筋トレの効果を更にアップさせています。
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速度を基準とするトレーニングの考え方
物体は
速度が上がれば上がるほど力が弱くなる
力が上がれば上がるほど速度は遅くなる
例えば、145gと軽量な野球のボールを投げるのに大きな力は必要がないため早い速度を出しやすく、逆に、重い重量を持ってのスクワットでは大きな力が発揮されますが、速い速度を出すことは期待できません。
各速度域によってトレーニングで得られる効果が違う、という点に着目し
筋肥大したい人には筋肥大しやすい速度
スピードアップしたい人にはスピードアップしやすい速度
をトレーニング効果の指標として使用する、という考えです。
速度の指標
筋力レベルやその日の調子に関わらず、その人にとっての1RMで発揮できるスピードは常に一定です。
例えば、筋肥大を狙った場合、1RMの100%を拳上するスピードは、長年鍛え上げた屈強なカラダでも、最近トレーニングを始めた細身の人でもほぼ一定です。
スクワットは0.3m/s ベンチプレスであれば0.2m/s となります。
筋肥大目的で1RMを60-80%に設定すれば速度は必ず0.5-0.8m/sになります。
筋肥大を目的とする場合に、拳上スピードが落ちた状態でフォーストレップス(あと1回も挙げられないという限界に達した際トレーナーが補助に入り、さらに1~2レップすることで、限界を超えて 筋肉を追い込む方法)で追い込むよりも、最適な拳上スピードを維持した重量で複数セット行うほうが、最大筋力を効率よく高めることができます。
速度を基準とするトレーニングのメリット
速度を基準としたトレーニングのメリットは大きく以下の3つです。
・トレーニング効率の向上
・怪我の予防になる
・アスリートのレベルアップ
アスリートのトレーニングに関しては次の章で説明します。
トレーニング効率の向上
1RMを基準にパーセンテージを割り出すトレーニング方法の問題点は上記でも述べたとおり体調やその日のコンディションによりブレが生じ、それを感覚値でしか図ることができないため目的別の最大の効率がでないという懸念点があります。
それに対して、速度を測定することで
一定の重さがいつもより早く上がる→コンディションがよく、負荷が軽すぎるため、重さを更にプラスできる。
同じ重さなのにいつもより上がる速度が遅い→体調不良を見出し、適した負荷に減らすことができる。
このようにスピードを測定することで、目標達成のための正しい数値を見出すことができ、過剰なトレーニングや、逆に負荷の低すぎるトレーニングを避けることができます。
けがの予防
パーセンテージ・ベースド・トレーニングの場合、体調が悪い場合、自己申告する、トレーナーが経験値から気づく、といったことが無い場合、その日のカラダに対する1RM設定に誤差が生じ無理をしすぎる可能性があります。
スピードをベースに計測することで、いつもより拳上スピードが遅い場合を「コンディション不良」と判断する一つの材料となります。よって怪我の防止につなげることができるのです。
スピードが手軽に測定できることで、けが予防やオーバーワーク回避につながります。
有効性
2020年に発表されたある論文では、ヴェロシティ・ベースド・トレーニングの有効性が発表されました。*1
16人の被験者アスリート(18歳~29歳までの男性)で、全員が最低でも2年以上のウエイト・トレーニング経験者。体重70kgから120㎏までの、幅広い体格のアスリートから選出したエビデンスによると、6週間に渡り、週2回のトレーニングを以下のグループごとの方式で実施。
伝統的な1RMを指標に用いたグループを「PBT」、Velocity Based Trainingを用いたグループを「VBT」として、トレーニング期間前後で最大挙上重量の平均増加率を比較すると以下の通りになりました。
・バックスクワット:PBT 8% VBT 9%
・ベンチプレス: PBT 4% VBT 8%
・デッドリフト: PBT増加せず VBT 6%
特筆すべきは、VBTはより大きな効果を得ただけではなく、トレーニング量は逆にPBT より6~9%程度少なくなった、ということです。
アスリートにおけるVBTの基準
多くのアスリートはスポーツのジャンルを問わず「瞬発力・パワーを向上させたい」と思っています。
そこで「VBT」という新なトレーニングが瞬発力・パワーを向上させる方法として、ここ数年アメリカを中心に急速に広がっています。
MLB のほか、NBA やNFL のチームなどあらゆるメジャー・スポーツの間でも積極的に採用されているのです。
ここで1つの基準としているのが、「自分の体重と同じ重さのウエイト」をいかに速く動かせるのか?というポイントです。競技性の違いはあれど、アスリートはまずは自分の身体を思い通りに動かさなければなりません。
「自体重の重量を秒速1.3mで動かす」これが出来れば、アスリートとして合格という基準があります。
基準は「自体重の100%を1.3m/s」ですが、自体重の重量が上がらない場合はパーセンテージと秒速を引き下げ、クリアしたら次の重量と速度を目指し、段階的に100%へ近づけていきます。
測定の際は5回、3セットで実施します。
1,2セット目は3セット目の60,70%を目安に実施して、アップを行い、
3セット目に目標とするパーセンテージの重量の速度を測定します。
実施種目はスクワット、デッドリフト、ベンチプレスで使用。
スクワットでは安全性を考慮してスミスマシンを使用します。
アスリートの場合、競技によっては
「爆発力を発揮させる筋肉が欲しい。しかし、筋肉を太くしたくない」という目的の場合があります。
その際も、速度を基準にすることでより目的が明確で、ぶれの無いトレーニングを実現することができるのです。
VBTを通じたパフォーマンスの向上は、一般的にある程度習熟してきた中級・上級段階のトレーニングに対して使用することが多いです。
その理由は、若いアスリートは、まだ十分に重い重量を早く動かす力やテクニックに乏しい場合が多く、速度に焦点を合わせる以前に、段階をおっておこなうべきトレーニングがまだあるからです。
筋出力を効率的にアップする為に、VBTの初期プログラムでは、
最大出力、筋力-速度
速度-筋力
の範囲に注力して実施しています。
1RMを増やし続けるプログラムであることが重要だからです。
もしもアスリートの1RMが同じままであると、1RM80%を更に速いスピード動かすことが出来ないということで、かなり速い段階で速度のパフォーマンスが停滞してしまいます。
デッドリフト、スクワット、ベンチプレスといったこれらの3つの筋肉に、筋力とスピードに焦点を当ててトレーニングしていきます。スピードだけに特化していくと、扱う重量が軽量すぎて、高出力が生まれないため、一定の重さを速く動かすことでより多くのパワーを生み出すことを目的としています。
また、週ごとに重量を上げてチャレンジしていく「漸進性過負荷の原則」に乗っ取っています。
Week1が1RM65%、75%、85%だったのが、Week2には+5%と、すこしずつ上げていきます。
このプログラムを1ヶ月取り組むことで、筋出力が向上して、競技やトレーニングのパフォーマンスが向上します。
トータル・ワークアウトではアメリカのトレーニング研究機関と共に、1か月のVBTトレーニング用のワークアウトシートを作成し、このメニューをメソッド化しています。
VBTを活用したケーススタディ
VBTを活用したトレーニングのケーススタディを2件ご紹介します。
・ベンチプレスで100kg拳上したい
・代謝を上げてダイエット(シェイプアップ)したい
ベンチプレスで100kg拳上したい
現状1RM 100%の重量が挙げきれず、いずれは100kgあげられるようになりたい、というケースです。
普段行っているベンチプレスの速度の計測を行い、
「筋肥大(筋力アップ)」出来る速度、0.5-0.8m/sの間で実施出来ているのかを確認する。
0.8m/sより速い場合は、重量が軽すぎる、
0.5m/sより遅い場合は重過ぎるため、いずれも適切ではありません。
0.5-0.8m/sの間で拳上できる重量を見出します。
同時に、個人差はありますが、一般的に自分以上の重さである100kgにチャレンジしていかなければならないので、「爆発的な瞬発力」も必須です。そこで、アスリート基準である「自体重のベンチプレスが1.3m/sで挙げられるか」の測定も行います。
これにより、そもそもの爆発力がアスリートレベルに対して、どの程度かを知ることが出来、筋力アップと同時に速度アップも必要なのか否か、といった、課題を明確化することができます。
速度が足りない場合は、VBT Workout Sheetに基づき、速度アップを目指す構成も必要になります。
同時に筋肥大(筋力アップの0.5-0.8m/sでのトレーニング実施が出来ているかを定期的にリアルタイムチェックをしていくと効率良く目標達成に近づけることができるのです。
代謝を上げてダイエット(シェイプアップ)したい
目的に応じたRMに対して、適切な重量設定になっているかを調べます。
筋力アップしながらシェイプアップ 8~13RM
筋力は維持しながらシェイプアップ 15~20RM
を目安にします。
トレーニングを長く続けていると、重量が横ばいになりがちです。
また、日常的な疲労などを考慮し、その時の重量が最適かどうかをきちんと見極めることが代謝アップには重要になります。
筋力アップしながらシェイプアップ 8~13RM では0.5-0.8m/s
筋力は維持しながらシェイプアップ 15~20RM では0.8-0.9m/s
が基準となります。
また、アスリート基準のテストを実施し速度アップも目指せば
筋肉の連動性を高める
扱える筋肉を増やす
といった事が可能になり、中性脂肪を燃やしやすいハイインパクトなトレーニングを通じて、効率的に体脂肪ダウンを実現することができます。
VBTの最終兵器
パーソナル・トレーニングジムのトータル・ワークアウトでは、効率的なトレーニングを行うためのVBTトレーニングの為に、重量を扱う速度を測定するためのTENDO(テンドー)というマシンの台数を増やし、各店舗に常設しています。
アスリートが自分の現状を知り、更なるレベルアップに対する明確な効果を得るために使用することはもとより、トータル・ワークアウトが「強度の低いアスリート」と位置づけする一般の方に対しても、まずはPBTで基礎筋力やフォームを整え、拳上の伸び悩みに直面する時期にVBTをとり入れるやり方が一般的です。
しかし、トレーニング初心者だからこそ、効果を目視しやすいTENDOを活用することもあります。効果や効率を目視することができるため、あなたのトレーニングのモチベーションアップにもつながります。
ただし、数字を追いすぎてフォームが崩れ、怪我をしないよう、
数値の計測はパーソナル・トレーナーに任せることをおすすめしています。
トレーニング効率の底上げ
PBTでもVBTでも、トレーニングの効率を底上げするために気を付けるべきことは同じです。
・食生活に気を付ける
・サプリメントもうまく摂り入れる
・ストレッチやボディケアで筋肉をいたわる
以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
トレーニングはパーセンテージで換算する感覚的な物から、スピードを計測して目視できるヴェロシティ・ベースド・トレーニングでよりあなたの筋トレ効率を上げることが出来るようになっています。
ヴェロシティ・ベースド・トレーニング(VBT)はPBTに比べてまだエビデンスが少なめですが
・無駄がない
・効果の表れ方が大きい
・怪我の予防になる
といったメリットがあります。
ただし、PBTが悪いというわけではありません。PBTにもトレーニング目的によって効果的な部分があります。
・ゆっくりと、使っている筋肉を意識する
・筋肉をつかう順序を意識する
・正しいトレーニングフォームを習得する
・左右差を修正する
・筋肉を動かし血流を良くする
といったコンディショニング目的にはPBTが適しているのです。
スピードが手軽に、正確に測定できるようになった今、スピードを基準とするVBTが目標達成の効果、効率を上げる上で最も頼りになる、と言っても過言ではありません。
本気でカラダを変えたい方、効率的な結果を求める方はぜひ一度トータル・ワークアウトのTENDOを活用し、ヴェロシティベースドトレーニングの爆発的な効果を体験してみてください。まずは無料カウンセリングをお試しください。
- *1 Comparison of Velocity-Based and Traditional Percentage-Based Loading Methods on Maximal Strength and Power Adaptations. Dorrell, H. et. al. 2020 Comparison of Velocity-Based and Traditional Percentage-Based Loading Methods on Maximal Strength and Power Adaptations. Dorrell, H. et. al. 2020